どうも、化粧品開発者のあひるです。
前回の脂肪酸塩について、「【化粧品の基礎知識】脂肪酸塩の特徴と役割」という記事を書きました。
今回は、ちょこっと発展系、石鹸についてお話しようと思います。
- 石鹸は肌にも、環境にも優しい(選択洗浄性と生分解性)
- 製造方法によって、石鹸の性質が異なる
- 枠練り石鹸の方が、お肌に優しい場合が多い
- 石ケン素地=石鹸だが、脂肪酸組成はわからない
- 石鹸にエタノールが多く配合されていても、大して気にしなくてOK
石鹸とは?
脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸カリウム塩の総称のことです。
今となっては、石鹸=洗剤
そんな感じでしょうか。
界面活性剤の分類で言うと、アニオン性界面活性剤になります。
石鹸の特徴を色々見ていきましょう。
酸に弱い
石鹸はアルカリ性。
酸(酸性)の成分と出会うと中和され、途端に洗浄力がなくなります。
つまり、肌に触れると、皮脂や汗などの汚れは、酸性成分ですので、中和されて洗浄能力がすぐに無くなります。これにより、過度に肌を刺激せず、余計なものだけ落とすことが可能になります。洗浄能力、界面活性剤としての能力がなくなるわけですから、不必要に、肌に残留しないし、浸透もしない。皮膚科医などで、石鹸が勧められる理由は、こういったことも要因の一つです。過度に洗いすぎない限り、肌に対しては、優しいことになります。
ミネラルに弱い
よく石鹸カスが・・・なんて言葉聞いたことありませんか?
石鹸はミネラル類(カルシウムとか、マグネシウムのこと)と反応して、金属石鹸になってしまします。
金属石鹸は全く泡立ちませんし、水にも溶けません。
ミネラルは汗などにも含まれており、風呂場で石鹸を使用すると、微量ではありますが、金属石鹸(石鹸カス)が発生します。
また、ミネラルを多く含む水の場合、石鹸は無力です。
日本は軟水なので、問題ありませんが、世界で硬水が出てくるような国では、石鹸を使用しても泡立ちはすごく悪くなります。
石鹸カス、金属石鹸になりやすく、洗浄能力をすぐに失う。水に溶けないので、浄化槽などでキレイに取り除かれる。環境にも優しい理由がこれですね。
温水が最適
石鹸の主成分である脂肪酸塩。
これらは、20℃以下などの冷たい水では溶けません。
溶けないと、当然洗浄力も発揮できません。
これらが石鹸の特徴、メリットでもあり、デメリットでもある部分ですね。
脂肪酸から石鹸を作る?植物油脂から石鹸を作る?
石鹸と言っても、作り方によって、大きく2種類の石鹸があります。
中和法石鹸と鹸化法石鹸です。
何やら難しい言葉が並びますが、解説していきます。
中和法石鹸
脂肪酸(ラウリン酸とか、ミリスチン酸など)をそのまま使用(高温で溶かし)して、アルカリ成分(水酸化Naなど)と反応させます。
この手法を、「中和法」と呼びます。
中和法で作られてた石鹸には、グリセリン(肌にも存在する保湿成分)は配合されていません。
※後で意図的に配合されば、話は別です。
中和法では、機械練りという製造方法がよく使われます。
大手メーカーでよく作られる石鹸で、大量生産ができ、商品コストもお安くなります。
鹸化法石鹸
植物油脂(オリーブ油やマカデミアナッツ油など)を使用して、アルカリ成分(水酸化Naなど)と反応させて作る石鹸です。
この手法を「鹸化法」と呼びます。
鹸化法で作られた石鹸には、グリセリンが含まれています。
なぜ、グリセリンが含まれるか?
簡単に言えば、植物油脂に、グリセリンの素が含まれているからです。グリセリンの素が、アルカリ成分と反応することによって、グリセリンが生成されるんです。
グリセリンは、保湿成分であり、肌の上にも存在します。水分と仲良しなので、風呂場などに置いておくと、風呂場の湿気と仲良くなり、溶けるのが早かったりします。
無添加石鹸や手作り石鹸などは、鹸化法で石鹸が作られていることが多いです。ですので、これらの石鹸は、溶けやすいと言われることが多いのです。
鹸化法では、枠練りという製造方法が使われます。
石鹸の製造方法の違い
固形石鹸を製造する場合、大きく2種類の方法があります。
枠練り法と、機械練り法です。
枠練り法
溶かした石鹸原料を大きな枠に流し込み、長時間かけて冷却し、固める。
十二分に冷えて固まったら、適度な大きさ(この場合、製品の大きさ)に切断して、さらに自然乾燥させる。
型打ち(型に入れ、圧力をかけ、見た目を整える工程)をして、製品となる。
型打ちしない場合もあります。
枠練り法では、保湿成分や美容成分を多く配合することが可能です。
また、枠練りには、
- コールドプロセス法(無乾燥法)
- ホットプロセス法(乾燥法)(釜炊き法)
の2種類があり、コールドプロセス法の方が、余計に手間暇かかります。
しかし、余分な熱を加えないため、石鹸中の天然成分が不必要に壊れないというメリットがあります。
○メリット
- 長時間の冷却工程により、石鹸の分子が大きな結晶構造を生成。
- そのため、溶けにくく(ふやけにくく)、崩れにくい石鹸となる(コールドプロセス)。
- 保湿、美容成分を配合しやすい。
○デメリット
- 製造時間がかかる(大量生産不向き)。
- 価格が高くなる傾向。
機械練り法
機械で石鹸原料を練り、大量生産を可能にした方法。
製造コストも抑えられる。
ただし、保湿成分や美容成分を配合しにくく、個性の出しにくい石鹸となります。
○メリット
- 大量生産が可能
- 価格が安価
○デメリット
- 石鹸が溶けやすい
- 保湿、美容成分を配合しにくい
上記のことは、下記の表にまとめています。
製造方法 | 素材 | メリット | デメリット | コスト |
---|---|---|---|---|
枠練り(コールドプロセス) | 素地量60〜70% | 保湿、美容成分を多く含有可能 | 製品化までの時間が長い、溶けやすく泡立ちにくい | 高くなる傾向 |
枠練り(乾燥法) | 素地量60〜70% | 保湿、美容成分を多く含有、溶けにくく、泡立ちが良い | 製品化までの時間が長い | 高くなる傾向 |
機械練り | 素地量98% | 大量生産可能 | 保湿成分を配合しにくい | 比較的安い |
石鹸の表示名称
石鹸の全成分表示、見たことはありますでしょうか?
作り方や使用した原料によって、記載方法が異なるのです。
ちょっとややこしいですが、意味がわかると面白いと思います。
脂肪酸とアルカリから製造した場合
例えば、使用した脂肪酸を、ミリスチン酸、ステアリン酸とし、水酸化Naで中和、製造した場合(この場合、中和法です)
- ミリスチン酸、ステアリン酸、水酸化Na
- ミリスチン酸Na、ステアリン酸Na
- 石ケン素地
の3パターンの表示方法があります。
油脂とアルカリから製造した場合
使用した油脂を、オリーブ果実油、ヤシ油とし、水酸化Naで中和し、製造した場合(この場合、鹸化法です)
- オリーブ果実油、ヤシ油、水酸化Na
- オリーブ脂肪酸Na、ヤシ脂肪酸Na
- 石ケン素地、グリセリン
の3パターンの表示方法があります。
どの記載パターンでもOKです。メーカーの自由なのです。
ややこしいですが、ここがわかれば、石鹸選びも楽しくなります。
石ケン素地と記載されていた場合、石鹸中にどの脂肪酸が配合されているかは、一切不明です。
メーカーに問い合わせする他、知る術はありません。メーカーに問い合わせても、教えてくれないかもですね。
また、全成分の中の上位にエタノールが含まれている石鹸があります。
それは、透明石鹸を作る際に必要な成分です。
石鹸の乾燥工程で、エタノールは大概なくなる(揮発する、蒸発する)ので、そこまで過敏に反応する必要はありません。
石鹸に限って言えば、エタノールが含まれているからと言って、肌に悪いかも?みたいなことは、気にしなくて大丈夫です。
石鹸の全成分上位に、エタノールが入ってるから、使用しない方がいい?
— あひる@化粧品開発者 (@ahiru_nonnbiri) 2019年11月25日
そのエタノールは、石鹸を透明にするために配合されてて、製造(乾燥)過程で、エタノールはほぼなくなります。
ですので、気にする必要はさほどないかと😌#化粧品あれこれ
ツイッターでも書きましたが、意外と知られていない事実なんですよね。
石鹸はお肌に優しいのか?
石鹸=お肌に優しい
これは、間違いではありません。上述した通りです。
しかし、正解でもありません。
なぜなら、石鹸によって、配合されている成分が異なるからです。
石鹸でも、石鹸成分100%のものもあれば、石鹸成分が配合されているだけの中途半端なものまであります。
例えば、石鹸成分+合成界面活性剤の石鹸なんかも存在します。
きちんと表記を確認し、良い石鹸を選んでください。
洗浄成分が石鹸成分100%に近いものは、お肌にも、地球(環境)にも優しいです。
但し、ラウリン酸には注意!
○メリット
- お肌に優しい
- コスパが良い
- 環境に優しい(生分解性に優れる)
○デメリット
- 泡立てが面倒
- 石鹸カスが気になる
- 持ち運びに不便
私が分析した各種石鹸など
長いもので、当ブログを運営し始めて、もう1年半を超えました(2021年1月時点)。色々記事にさせてもらっている中に、石鹸に関する記事も書かせてもらっています。化粧品選び、洗顔選びの参考になれば幸いです。
最後に
石鹸に関して、製造方法、特徴など、お話しました。
ここ最近の記事は、石鹸に関連した記事ばかりだったかと思います。
もちろん理由があります。
仕事で石鹸を検討することが多々ありまして・・・。
元々私は、石鹸にあまり良いイメージはもっていませんでした。
なぜなら、使い勝手が悪いので・・・。持ち運ぶのも不便だし、仕事柄、出張も多いので。
それゆえ、今では私もそうですが、世間一般でも、使用される頻度も少なくなりました。
ただ、石鹸を検討するうちに、使い勝手の悪さはあるものの、人によっては良い洗浄剤であることに気付かされました。
当ブログで取り上げることで、少しでも石鹸に関するイメージなどが変わってもらえればと思った次第です。
肌をキレイに保つことは、美肌への大きな一歩です。美肌を目指して、日々の洗浄、スキンケアなど、頑張って行きましょう。
化粧品に関する基礎的なことを、色々と記事にしています。ご興味あれば、読んでみてください。
個人的なランキングページも作成しています。良ければご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。