あひるの化粧品と戯れる日記

化粧品開発者が化粧品やそれに関する知識、情報などを発信していくブログです。たまに無関係なことも書きます。

【ステロイドは悪者?】脱ステロイドは危険 ステロイドの特徴と作用

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どうも、化粧品開発者のあひるです。

未だにステロイド=悪者、とするブログや本、ステロイド未配合を謳うコスメ、様々存在していますね。

ですが、ステロイド=悪者ではないことを当記事で、ご説明しようと思います。

 

 

 

 

今回のポイント!
  • ステロイドには、当然、副作用がある
  • ステロイドは、アトピー性皮膚炎の標準治療薬
  • 脱ステは、アレルギー発症リスクを上げる可能性がある

 

 

そもそもステロイドとは?

ステロイドとは?

ステロイドとは、ステロイド外用薬、お薬のことです。

さすがに、名前くらいは聞いたことがあるでしょうし、アトピー性皮膚炎の方に使用するお薬ってこともだいたいの人が認知していることではないでしょうか。

これは何も、日本に限ったお薬ではなく、世界でも使用されているお薬です。現役バリバリの薬ですね。

まぁ、ステロイドと言っても、様々な種類があります。

副腎皮質ホルモン(糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド)、性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲン)があります。

アトピー性皮膚炎で使用されるのは、糖質コルチコイドです。このステロイドは、人の体で作り出されているホルモンの一種なんですよね。何も、人間が人工的に作り出した化学物質、というわけではないのです。

ここを勘違いされている方も、少数おられますね。

 

 

 

ステロイドの作用

ステロイド薬=アトピー性皮膚炎のお薬。

では、ステロイドとは、どのように、アトピー性皮膚炎に作用するのでしょうか。

簡単に言えば、抗炎症作用です。

アトピー性皮膚炎は、皮膚に炎症が生じる病気です。皮膚のバリア機能が弱く、外からの刺激に敏感になっている状態です。この敏感になっている状態が、まさに炎症を起こしている状態です。この炎症を鎮めてくれるのが、ステロイドなのです。

 

ステロイドには、強さがある

ご存知の方は、あまり多くはないでしょう。

「ステロイド」と言っても、その薬の強さは、色々なのです。強力な抗炎症作用をもつステロイドもあれば、その逆のステロイドもあるのです。

皮膚科医が処方してくれますから、患者側は特に知らなくても良いことかも知れません。皮膚の炎症具合を見て、皮膚科医がきちんとしたステロイドを処方してくれますからね。

一応、どんな物があるのか知りたい方用に、ランク表を記載しておきますね。

◯群 薬名称()内は、化合物名称 配合量
Ⅰ群 ストロゲン デルモベート®(クロベタゾールプロピオン酸エステル) 0.05%
Ⅰ群 ストロゲン ジフラール®、ダイアコート®(ジフロラゾン酢酸エステル) 0.05%
Ⅱ群 ベリーストロング フルメタ®(モメタゾンフランカルボン酸エステル) 0.1%
Ⅱ群 ベリーストロング ビスダーム®(アムシノニド) 0.1%
Ⅱ群 ベリーストロング テクスメテン®、ネリゾナ®(吉草酸ジフルコルトロン) 0.1%
Ⅱ群 ベリーストロング パンデル®(酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン) 0.1%
Ⅱ群 ベリーストロング リンデロン DP®(ベタメタゾンジプロピオン酸エステル) 0.064%
Ⅱ群 ベリーストロング アンテベート®(酪酸プロピオン酸ベタメタゾン) 0.05%
Ⅱ群 ベリーストロング トプシム®(フルオシノニド) 0.05%
Ⅱ群 ベリーストロング マイザー®(ジフルプレドナート) 0.1%
Ⅲ群 ストロング エクラー®(デプロドンプロピオン酸エステル) 0.3%
Ⅲ群 ストロング ボアラ®(デキサメタゾン吉草酸エステル) 0.12%
Ⅲ群 ストロング ベトネベート®(ベタメタゾン吉草酸エステル) 0.12%
Ⅲ群 ストロング メサデルム®(プロピオン酸デキサメタゾン) 0.1%
Ⅲ群 ストロング アドコルチン®(ハルシノニド) 0.1%
Ⅲ群 ストロング フルコート®(フルオシノロンアセトニド) 0.025%
Ⅳ群 ミディアム リドメックス®(吉草酸酢酸プレドニゾロン) 0.3%
Ⅳ群 ミディアム レダコート®(トリアムシノロンアセトニド) 0.1%
Ⅳ群 ミディアム アルメタ®(アルクロメタゾンプロピオン酸エステル) 0.1%
Ⅳ群 ミディアム ロコイド®(ヒドロコルチゾン酪酸エステル) 0.1%
Ⅳ群 ミディアム グリメサゾン®、オイラゾン®(デキサメタゾン) 0.1%
Ⅳ群 ミディアム キンダベート®(クロベタゾン酪酸エステル) 0.05%
Ⅴ群 ウィーク プレドニゾロン®(プレドニゾロン) 0.5%

出典:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018

なお、Ⅴ群は、作用が極めて弱いため、現在は、アトピー性皮膚炎に対して、ほとんど使用されていません。ただし、経皮吸収が高い、目の周りや陰部では有効なので、使用されることはあります。

一方、Ⅰ群は、作用が強すぎることもあります。皮膚科専門医のもと、より慎重に使用するようにしてください。

 

ステロイドは、毎日使用するものでもない

ステロイドは、お薬です。当然、副作用の懸念があります。これは何もステロイドに限ったことではありませんけどね。

ステロイドの副作用は、以下の通り

  • 皮膚が薄くなる
  • 毛が濃くなる
  • ニキビ
  • 酒さ様皮膚炎
  • 皮膚線条

があります。

赤字は、元に戻りにくい副作用となります。一つずつ、見ていきましょう。

皮膚が薄くなる

ステロイドを使用していて一番多い副作用は、皮膚が薄くなることですね。

ステロイドは、真皮に存在する線維芽細胞を少し弱体化させる作用があります。ただし、自然と回復する力も十分ある細胞ですので、ステロイドを数日お休みすれば、十分回復してくれます。ところが、毎日ステロイドを塗り続けると、線維芽細胞が慢性的に弱まることが知られています。線維芽細胞は、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの美容成分を作り出す細胞です。弱まってしまうことで、これら美容成分が作られにくくなります。すると、皮膚の弾力などが弱くなり、薄くなってしまう、そんな症状が見られることがあります。

ステロイドを4週間毎日使用した例がありますが、逆に皮膚バリア機能が下がってくることが報告されています1)。

このような副作用があることから、ステロイドは毎日使用するものではありませんね。

1)Allergol Int 2019; 68:391-3. 

毛が濃くなる

塗っている内に毛が濃くなります。ステロイドの中断を使用すれば、大抵元に戻ります。

ニキビ

ニキビの他、毛のう炎、毛包炎などがあります。

酒さ様皮膚炎

元に戻りにくい副作用となります。ステロイドの作用によって、血管収縮を繰り返すと、やがて血管が縮みにくくなって、拡張して戻らなくなることがあります。これが顔全体や口周りに広がった場合、酒さ様皮膚炎という、治しにくい赤みになってしまうことがあります。

皮膚線条

ステロイドの副作用で、皮膚が薄くなってしまうと、亀裂、割れができやすくなり、皮膚線条、妊娠線のような肉割れが残ってしまうことがあります。

妊娠線同様、一度できてしまうと、完全に治る、なくなることはないかと思います。

 合わせて読みたい

あと、よく勘違いされている方も多いのですが、色素沈着は、ステロイドの副作用ではありません。

色素沈着は、炎症によるもの。つまり、アトピー性皮膚炎の方に起きやすい症状であって、何も、ステロイドの副作用ではないのです。アトピー性皮膚炎は、皮膚が常に炎症を起こしている状態のようなもの。その炎症によって、色素沈着が引き起こされているだけです。炎症をきちんと鎮めてあげれば、色素沈着は、薄くなっていきます。

 

 

 

ステロイドをやめる判断を勝手にしない

皆さん、風邪を引かれたとき、どうされますか?

行動パターンは、十人十色かもしれませんが、ここでは、お医者さんに受診されたパターンを想定してみましょう。

受診された場合、お薬を処方してもらうと思います。そのお薬を飲んで、風邪が治ったと自己判断し、お薬を飲むのをやめている方、いませんか?

もったいないからと言って、ストックしている方、いませんか?

処方してもらったお薬は、基本的に飲みきりがベターでベストです。

風邪を引いた本人は、元気になったから、薬なんて必要ねーよ!ってなるかもしれませんが、それは間違いです。一見完治したように見えるかもしれませんが、体内には、まだウイルスや細菌が生存している場合があり、薬をやめることによって、ウイルスが復活、細菌が復活する場合があります。つまり、ぶり返しですね。きちんと処方された量、お薬を飲んでいれば、ぶり返すことはなかったのに、お薬を途中でやめてしまったがために、ぶり返す。とてもよくあることですし、経験された方も多いのではないでしょうか。

前置きが長くなりましたが、アトピー性皮膚炎、ステロイドに関しても同じことが言えます。

ステロイドの副作用が怖いからと言って、医者に支持を仰がず、独断でステロイドをやめてしまう、一定数いるのは事実です。ですが、絶対にやめておきましょう。

皮膚がきれいになったからといって、ステロイドを独断で塗るのをやめた場合、ほぼ確実にぶり返しが起きます。しかも、余計に酷くなった状態でぶり返してしまいますので、絶対に独断でやめるのは、やめてください!

ステロイドをやめる際は、十分に、皮膚科専門医と相談してからにしてくださいね。

ステロイドを毎日塗るな、勝手にやめるのはNGだ、と色々言っておりますが、ステロイドは、定期的に塗るのが一番良いのです。プロアクティブ療法と呼ばれている使用法です。

プロアクティブとは、前もって動く、の意味で、悪化する前に治療するってことです。ステロイドの副作用を抑えながら、効果を最大限発揮する使用方法のことで、ステロイドの使用回数や強さを次第に減らしていくことを目指しています。この治療法は、2000年前後より使用されるようになり、今現在では、ほとんどの皮膚科医がプロアクティブ療法を勧めてくれます。

このプロアクティブ療法をするのとしないのとでは、結構違いが出てきます。生後3ヶ月〜7歳のアトピー性皮膚炎患者を、プロアクティブ療法と、そうでないリアクティブ療法(悪化してから治療する)とで分けて、一年間観察したところ、プロアクティブ療法の方が、再び悪化する確率が低かったそうです2)。

2)J Dermatol 2016; 43:1283-92

 

 

 

脱ステロイド(脱ステ)は危険なのか?

さて、ここまでステロイドの作用、副作用などに関して、記述してきました。

副作用の情報が先行して、「ステロイドはよくないもの」と認識されてしまっている方が一定数おり、さらにその中から、脱ステロイド、脱ステを謳う素人連中がいます。ネット上にも、そういった情報が沢山あるのが現状です。

脱ステロイドが広がった背景には、ステロイドの副作用もそうですが、使い方にも問題がありました。医者の言うことを聞かず、化粧品にステロイドを含ませ、使用する人がいたそうです。

ステロイドは、血管を収縮させ、炎症を抑えるお薬です。血管を収縮させることで、一時的にですが、肌は白くなります。これが美白効果として、一時期ウケたんですよね・・・。これによって、ステロイドを塗り続けた場合、どうなるか?先程記載したように、血管が拡張した戻らなくなる「酒さ様皮膚炎」を引き起こし、逆に赤ら顔になってしまう。

このような、ステロイドの誤用から、「ステロイドはよくにないもの」という認識を一層強めたような気がします。さらに根も葉もない話は多数。失明する、肌が黒くなる、一度使用するとやめられなくなる、などなど。

ステロイドは、長い時間をかけて、使用していくものです。アトピーに対して、即効性を求める人が多い中、なかなか良くならないのに、副作用のリスクが高い、そんなステロイドに対する不信感が、脱ステロイドに拍車をかけたのかも知れません。

2000年には、アトピー性皮膚炎に対する治療のガイドラインができ、皮膚科医はこれに沿って、治療が行われるようになりました。国としての「標準治療」ですね。これができたことによって、アトピーが重症化している方は、激減しています。読者の皆様も、ご自身の周りに、アトピー性皮膚炎が重症化されている方は、あまりおられないのではないでしょうか。ステロイドの適切な指導が浸透し、重症化するリスクが減ったからですし、保湿剤との組み合わせが良好な結果に繋がっていることがいくつも報告されています3,4)。

にも関わらず、脱ステロイドに走る人たちは、少なからず・・・。そして、脱ステに走るのは、親世代です。子どもは、薬を気にしたりはしませんからね。

親たちは、脱ステロイドを謳い、我流で、子どもを治そうと必死なのかもしれません。ですが、脱ステをさせられている子どもたちは、全身を掻きむしり、皮膚がボロボロの状態の子も少なくありません。親たちは、治そうとしている過程だと主張していますが・・・。

親の無知のせいで、親の自己満足のせいで、子どもたちが大変な思いをする、可愛そうなことだと思います。

脱ステによって、アトピーが悪化した場合、アレルギー体質を悪化させるリスクも高まります5)。本当に、目も当てられないですね。

ステロイドは、アトピー性皮膚炎の標準治療です。標準治療を無視して、よくなることなんて、そうそうありません。十二分に気をつけましょう!

3)Ther Adv Cardiovasc Dis 2017;11:177-84.

4)Dermatology 2007; 214:61-7.

5)J Allergy Clin Immunol 2017; 140:1572-9.e5.

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最後に

ステロイドについて、色々と解説してみました。

当記事を読んでもなお、脱ステが良いと思われる方は、少ないのではないでしょうか。

作用、副作用をきちんと理解し、皮膚科医と親密にコミュニケーションをとって、アトピー性皮膚炎の治療にあたってください。

くれぐれも、独断や偏見で、アトピー性皮膚炎に向き合おうなどとは思わないように。大抵、ひどくなる場合がほとんどですからね。

 

普段は、化粧品に関して色々記事にしています。よければ、そちらもご覧ください。

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最後までおよみただき、ありがとうございます。

 

 

 

 

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