どうも、化粧品開発者のあひるです。
先日書いた、「【お肌の基礎知識】皮膚の基本機能と構造 表皮・真皮・皮下組織」という記事、皮膚について書いたことで、ようやく美白成分について書くことができます。
みんな興味のある成分ではないでしょうか。肌が白いってのは、美肌に重要な要素の一つになってますからね。
ではでは、最後まで御覧ください。
- メラニン生成メカニズムは、多段階であり、美白成分の種類によって、作用する段階が異なる
- メラニンは生体防御の一種であり、必ずしも悪者ではない
- 過度な美白はお肌には逆効果
シミ、くすみの発生メカニズム
シミ、くすみ発生のきっかけ
シミ、くすみがどうして発生するか、ご存知でしょうか?
「紫外線(UV)にさらされるから」
と思い浮かべる人が圧倒的多数な気がします。
もちろん、紫外線もシミ、くすみの原因の一つであることに間違いはありません。
ですが、紫外線だけが原因ではありません。
- ターンオーバーの乱れ
- 加齢
- ホルモンバランスの乱れ
なども、シミ、くすみが発生する原因に挙げられます。
妊娠、出産を経験した女性で、シミ、くすみが増えたって方、いませんか?それは、ホルモンバランスの乱れが、シミ、くすみに繋がってしまったんですよね。
そもそもシミ、くすみは必要なのか?
なぜ、シミやくすみができてしまうかというと、お肌で作られる「メラニン」のせいです。
メラニンがなければ、シミやくすみができることはないんですよ。
じゃあ、メラニンは、人にとって不要な、邪魔な存在なのでしょうか?
答えは違いますよね。
必要な存在なんですよ。
メラニンは、紫外線などの外的刺激から、お肌(細胞)を守る防御の役割を果たす物質なのです。肌の色が明るい=紫外線などが透過しやすく、お肌の細胞がダメージを受けやすくなります。一方、メラニンによって、肌の色が黒くなると、紫外線などが透過しにくく、お肌の細胞がダメージを受けにくくなるんです。俗に言う「生体防御」というやつです。
ですので、日差しの強い国や地域に住んでいる人の肌の色が黒いのは、紫外線からお肌を守ろうとしているから、ということになります。
立場が違えば、見方が変わるということです。
美に関連する立場だと、メラニン=悪
という感じかと思いますが、
生体防御の観点から言えば、メラニン=良
なんです。
紫外線もそうですよね。美容関連からしてみれば、悪的なポジションですが、ビタミンDを生成するには、必要不可欠、生きていく上で、紫外線、日光は必ず必要ですからね。
シミ、くすみ発生のメカニズム
さて、発生するメカニズムは、どうなっているのでしょうか。
シミ、くすみ発生のメカニズムは、下記のように段階を踏んで行われます。
- 何らかの刺激によって、メラニン生成指令が出る
- メラノサイトでメラニンを生成(チロシナーゼの活性化)
- メラノサイトから外の細胞(ケラチノサイト)へ排出
このように段階を踏み、適切にメラニンは作られ、排出、細胞を外的刺激(紫外線)から守る役割を担います。
以前書かせてもらった、【お肌の基礎知識】皮膚の基本機能と構造 表皮・真皮・皮下組織という記事で、メラノサイトについて、少し触れましたよね。
メラノサイトは、シミ、くすみの原因である、メラニンを作る細胞のことでした。
メラニンは、アミノ酸の一種である「チロシン」とチロシンを変化させる酵素「チロシナーゼ」から作られます。
図にすると、下記のイメージです。
※フェオメラニン:黄色メラニン、ユーメラニン:黒色メラニン
上記のように、段階を経て、メラニンは作られます。美白成分の多くが、「チロシナーゼ」をターゲットに作られているのは、言うまでもありませんね。だって、チロシナーゼが働かなければ、メラニンはできないですからね。
メラニンが作られても、きちんとターンオーバーが働いていれば、シミやくすみのなることもないのですが、なかなかそうはいかないのが現状です。ターンオーバーが乱れ、メラニンが肌内部に留まることで、シミ、くすみの原因となることもあります。
美白成分の種類と作用機序
美白成分は、先程書かせてもらったメカニズムに応じて、作られたりしています。美白成分一つで、全ての段階にアプローチできるわけではないんですよ。美白成分の種類によって、アプローチする場所が異なりますので、下記では、美白成分、アプローチごとにまとめています。
メラニン生成指令を阻害
文字通り、メラノサイトに送られてくる、「メラニンを作れ!」という指令を阻害、なかったことにするものです。下記の成分がそれに該当します。
トラネキサム酸
美白成分の代表格でもある。意外と知られていないが、抗炎症作用の側面を持つ。元々は、資生堂が開発、現在では多数のメーカーが使用できるようになっている。m-トラネキサム酸は、資生堂での呼び名、ホワイトトラネキサム酸は、ロート製薬での呼び名であるが、トラネキサム酸のことである。※mはメラニンのこと
なお、医薬部外品、医薬品でのみ使用可能であり、化粧品には配合できない。肝斑に対しても有効な成分でもある。
トラネキサム酸を有効成分としたコスメは、下記で記事にしています。化粧品選びの参考にしてください。
トラネキサム酸セチル酸塩酸
トラネキサム酸の誘導体、親戚みたいなものです。トラネキサム酸(水溶性)にセタノール(油溶性)をくっつけた形です。これにより、両親媒性の性質を獲得しています。油溶性を獲得することで、経皮吸収性を向上、トラネキサム酸より、持続時間が長くなる傾向にもある。
カモミラET
カモミラから採れるエキスのこと。スクワランから抽出された成分をカモミラETと呼んでいる。一方、水、BG、エタノールから抽出されたカモミラエキスは、カミツレ花エキスと呼ばれている。メラニンを作れ!という指令を出す「エンドセリン」。カモミラETは、エンドセリンの働きを抑制し、メラニンを作られにくくする作用があります。
チロシナーゼの阻害
チロシンをメラニンへと変える「チロシナーゼ」。そのチロシナーゼの働きを阻害、妨害しようっていうのが、下記成分になります。
ハイドロキノン
別名、お肌の漂白剤。医薬部外品での使用は認められていない(化粧品では使用OK)。ハイドロキノンの構造が、チロシン、ドーパと似ていることから、チロシナーゼが勘違いして結合、チロシナーゼが作用するはずだったチロシンの数が減ることから、メラニンの生成量が減るというメカニズムである。美白作用はかなり高いが、安全性に難のある成分でもある。ハイドロキノン配合コスメを使用する際は、十二分に注意した方が良い。
ハイドロキノンは、熱、光に対して弱く、容易に構造が変化し、その作用を失う。また、高濃度で使用することで、高い美白作用を得ることができるが、白斑などの副作用を生じる危険性もあり、真っ当な会社、メーカーさんは、使用していないのが実情である。
アルブチン
ハイドロキノン誘導体。ハイドロキノンにグルコース(糖)を付加し、安定性を向上させたものです。美白作用も緩和になり使用しやすい成分です。アルブチン、実は2種類存在します。αタイプとβタイプ。一般的には、βアルブチンは、アルブチン、αアルブチンは、α-アルブチンとして表記されます。ちなみにα-アルブチンは、βの10倍程度のチロシナーゼ活性阻害効果があります。また、肝斑に対する作用も報告されており、有能な美白成分と言えるでしょう。
ビタミンC誘導体
ビタミンC誘導体は、多数あるが、そのいずれもチロシナーゼ活性を阻害する働きがある。また、できてしまったメラニンを還元、無色化する作用もある。一方で、皮脂分泌抑制作用もあることから、皮脂の分泌量が少ない人は、少々注意が必要です。
- アスコルビルグルコシド(水溶性)
- リン酸アスコルビルMg(水溶性)
- テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(油溶性)
- パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(両親媒性)
- 3-O-エチルアスコルビン酸(水溶性)
主に使用されるビタミンC誘導体である。
パルミチン酸アスコルビルリン酸3Naは、ビタミンCを両親媒性にした珍しいタイプ。そうすることで、皮膚浸透性を向上させている。ただし、長期安定性には、難があり、早めに使い切る方が良い。そんな側面もあってか、部外品への配合は許可されていない。
3-O-エチルアスコルビン酸は、他の誘導体と少し異なります。一般的なビタミンCを誘導体は、皮膚に塗られた後、皮膚に存在する酵素によって、分解され、アスコルビン酸になり、効果を発揮します。一方、3-O-エチルアスコルビン酸は、酵素反応を必要とせず、そのままで効果を発揮できるという特性を持っています。即効性があり、なおかつ、持続性もある成分です。
コウジ酸
醤油や味噌などを作る際に用いられる、コウジカビから得られる成分。チロシナーゼそのものを不活性化する作用があります。
エラグ酸
コウジ酸同様、チロシナーゼそのものに働きかけ、不活化する作用があります。
4-n-ブチルレゾルシノール
ポーラが開発した美白成分。ルシノールと言う名で知られているかと思います。化粧品への配合は現状不可能。コウジ酸、アルブチンよりも、チロシナーゼ活性を阻害する力が強い。また、肝斑に対しても有効な成分であることが確認されている。
リノール酸S
サンスターが開発した美白成分。リノレックSとも呼ばれる。化粧品への配合は不可で、部外品でのみ使用可能である。
不飽和脂肪酸であるリノール酸をリポソーム化し、製剤中(商品中)で安定的に存在、角層への浸透性を高めたリポソーム化リノール酸です。チロシナーゼ活性を阻害し、メラニン生成量を減少させる。一応、肝斑に対しても有効なデータが得られている。
4-メトキシサリチル酸カリウム塩
資生堂が開発した美白成分。略して4MSKとも呼ばれる。チロシナーゼの阻害によるメラニン生成を抑制をしつつ、溜まったメラニンを排出する役割も担っている。
5,5'-ジプロピルビフェニル-2,2'-ジオール
カネボウが開発した美白成分。大変ややこしい名前です。通称、マグノリグナンと呼ばれています。他の美白成分と異なり、チロシナーゼの活性を阻害するのではなく、チロシナーゼそのものの存在量を減らす効果があります。チロシナーゼの量が減れば、当然、メラニンへと変化する量も減りますので、美白効果が期待できるというわけです。ちなみに美白効果は、アルブチン、コウジ酸よりも高いことが知られています。
メラニン輸送の阻害(メラノサイトにおける)
メラノサイトでいくらメラニンが作られようとも、表皮へと移動しなければ、人には目視できません。つまり、メラニンの移動をストップさせよう!っていう美白成分です。
ニコチン酸アミド(ナイアシンアミド)
ビタミンB3の誘導体。昨今では、美白成分よりは、抗シワ成分として有名になっているかもしれません。ちなみに、シワ改善医薬部外品の場合、ナイアシンアミド、美白医薬部外品の場合、ニコチン酸アミドと表記されます。メラニンの受け渡しを阻害する作用があり、それにより、美白効果が得られる成分となっています。
メラニン排出の促進(ケラチノサイトにおける)
表皮にメラニンが留まることで、シミやくすみとして、人に目視されるわけです。メラニンが作られても、留まらないようにすれば、肌トーンに影響を与えることになります。そこに着目した美白成分です。
デクスパンテノールW
2018年に承認された、ポーラ独自の美白成分。PCE-DPとも呼ばれる。細胞活性を高め、ターンオーバーを促進。溜まったメラニンの排出を促す作用がある。また、メラニンの分解をも行う成分でもあり、これからの活躍が期待されている。市場に出て間もないので、安定性については、まだまだこれからという側面もある。
アデノシン-リン酸ニナトリウムOT
大塚製薬が開発した成分。別名、エナジーシグナルAMP。エネルギー物質の一種であり、代謝を高め、ターンオーバーを促進する作用を持っている。ターンオーバーを促進し、溜まったメラニンの排出に一役買う成分である。
結構美白成分ってあるんですよね。ここに挙げたのは、一例ですし、部外品に使用できない成分で、美白作用が確認されているのは、たくさんあります。
美白ケア=部外品というイメージ、先入観がある方は、たくさんかと思いますが、意外とそんなことはありません。美白作用が確認できているが、化粧品グレードで商品を展開しているものもあるんですよね。美白とは謳えないんですけどね(笑)謳い文句などを鵜呑みにするのではなく、その成分がどんな作用があるのか?という一歩突っ込んだところまで考えれば、ご自身の肌悩みの解決への大きな近道になると思いますので、ぜひ当記事を参考に、化粧品選びをしてみてください。
あと、部外品や化粧品も、たかが化粧品ですので、即効性などはありません。少なくとも、一ヶ月程度は使用し続け、お肌を観察することが重要かと思います。
美白成分のまとめ
箇条書きで、美白成分について書きましたので、下記のように表にまとめてみました。こちらのほうが、見やすいかもですね。
作用機序 |
成分名(部外品) 一般名、愛称 |
表示名称 | 承認時期 |
申請企業 備考 |
---|---|---|---|---|
メラニン生成指令の阻害 | トラネキサム酸 | − | 2002 | 資生堂 |
メラニン生成指令の阻害 |
トラネキサム酸セチル塩酸塩 TXC |
− | 2009 | シャネル |
メラニン生成指令の阻害 | カモミラET | − | 1999 | 花王 |
チロシナーゼの阻害 | − | ハイドロキノン | − |
− お肌の漂白剤 |
チロシナーゼの阻害 | アルブチン | アルブチン | 1990 |
資生堂 α、βタイプが存在 |
チロシナーゼの阻害、メラニン還元 | L-アスコルビン酸2-グルコシド | アスコルビルグルコシド | 1994 |
資生堂 ビタミンC誘導体 |
チロシナーゼの阻害、メラニン還元 | リン酸L-アスコルビルマグネシウム | リン酸アスコルビルMg | 1990 |
武田薬品工業 ビタミンC誘導体 |
チロシナーゼの阻害、メラニン還元 | テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル | テトラヘキシルデカン酸アスコルビル | 2007 |
日光ケミカルズ ビタミンC誘導体 |
チロシナーゼの阻害、メラニン還元 | − | パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na | − |
− ビタミンC誘導体 |
チロシナーゼの阻害 | 3-O-エチルアスコルビン酸 | 3-O-エチルアスコルビン酸 | 2004 |
日本ハイボックス ビタミンC誘導体 |
チロシナーゼの阻害 | コウジ酸 | コウジ酸 | 1988 | 山省製薬 |
チロシナーゼの阻害 | エラグ酸 | エラグ酸 | 1997 | ライオン |
チロシナーゼの阻害 |
4-n-ブチルレゾルシノール ルシノール |
− | 1998 | ポーラ |
チロシナーゼの阻害 |
リノール酸S リノレックS |
− | 2001 | サンスター |
チロシナーゼの阻害 |
4-メトキシサリチル酸カリウム塩 4MSK |
− | 2003 | 資生堂 |
チロシナーゼの阻害 |
5,5'-ジプロピルビフェニル-2,2'-ジオール マグノリグナン |
− | 2005 | カネボウ |
メラニン輸送の阻害 | ニコチン酸アミド | ナイアシンアミド | 2007 | P&G |
メラニン排出の促進 |
デクスパンテノールW PCE-DP |
− | 2018 | ポーラ |
メラニン排出の促進 |
アデノシン-リン酸ニナトリウムOT エナジーシグナルAMP |
− | 2004 | 大塚製薬 |
ちなみに、白斑で問題となったロドデノールは、2008年に認可されています。今は、配合することは不可です。作用機序は、チロシナーゼの阻害です。阻害する力があまりに強かったために、引き起こされた問題です。ロドデノールの構造は、ハイドロキノンと酷似しており、故に、ハイドロキノンが危険視されるのは、そのためでもあります。
当たり前の当たり前ですが、美白コスメだけを使用するのではなく、紫外線防御コスメもきちんと使用してくださいね。
紫外線対策してないのに、シミが〜、とか言わないように(笑)さすがにいないか。
紫外線対策コスメについても書いていますので、化粧品選びのご参考にどうぞ。
最後に
美白成分について、色々と書いてみましたが、かなり長くなってしまいました。当然ですが、覚える必要とかはなく、化粧品を選ぶ際に、参考になれば良いと思っています。
また、過度な美白は、お肌の白斑や、生体防御の低下なども招きかねません。正しい知識で、正しい美白ケアを行って、美肌を手に入れるようにしてください。
その他、予備知識的な感じで、色々書いています。化粧品選びの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。